※Yahoo! Newsに記事を投稿しました。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f9f9c25597b7d2d53a63636214a9f6354b8733f5
こんにちは、三城雄児です。「人と組織の治療家」として、コンサルタントとして、セラピストとして、教員として、経営者として、特にビジネスにおいて、一人ひとりが本当の自分で働くことができる、生きることができるためのサポートをしています。
今日は、私がいま学びつつある東洋医学の「本治・標治」という考え方を、組織開発にどう活かすか、お話ししたいと思います。
風邪をひいたとき、薬で熱を下げるだけじゃなく、ちゃんと休息や栄養をとって体を整えますよね。東洋医学は「人そのものをみる」学問で、単なる症状への対処ではなく、症状の奥に隠れている根本から健康を取り戻す智慧が詰まっています。
この視点、実は組織やチームの課題を解決するのにもすごく役立ちます!
さあ、一緒にそのヒントを探ってみましょう。
本治・標治って何?
東洋医学では、治療を「本治」と「標治」の2つに分けます。本治は、体の根本的なバランスや体質を整えること。例えば、慢性的な疲れの原因が乱れた生活習慣なら、睡眠や食事を改善する、さらには睡眠や食事を大切にできない根本的な身体や心にある要因を探っていく、そのような探究をし続けることで、本当に自分に起こっていることを気づくプロセスです。一方、標治は、目の前の症状を素早く抑えること。頭痛なら、まず痛みを和らげる薬や施術です。
この2つ、どちらも大事です。例えるなら、家に例えるとわかりやすいかも。屋根に穴が開いて雨漏りしてるなら、まずバケツで水を受け止める(標治)。でも、根本的に屋根を修理しないと(本治)、また同じ問題が起こりますよね。東洋医学は、この「短期的な対処」と「長期的な改善」のバランスを教えてくれるんです。
そして、さらにいうと、屋根が壊れるということは一体、自分たちに何が起こっているのか、そんなことまで深掘りしていきます。
組織開発にどう活かす?
じゃあ、これを組織やチームにどう当てはめるか、具体例で見てみましょう。
標治:目の前の「症状」を抑える
ある中小企業の営業チームで、最近ミーティングがギスギス。メンバー同士の意見がぶつかり、会議が長引いて成果も出にくい。そんなとき、まず「標治」として、すぐに対話の場を設けるんです。例えば、ファシリテーターを入れて、ルールを決めて議論を整理。とりあえず対立の「火」を消すわけです。
他にも、業績が落ちてるチームなら、短期的なキャンペーンやインセンティブを導入して数字を底上げ。これ、組織の「頭痛」を抑えるようなもの。すぐに効果が出るから、チームのモチベーションもちょっと上がります。
でも、ここで終わりだと、また同じ問題がぶり返すんですよね。対立や業績低迷の「本当の原因」は、もっと深いところにあるかもしれないから。
本治:根本から組織を整える
さっきの営業チーム、なぜギスギスしてるのか、ちょっと掘り下げてみると、実は、人と人との間に起こっている「信頼の欠如」が原因だったりします。外側に表れている課題ではなく、一人ひとりの内側に起こっている、目に見えないテーマが重要だったりするのです。メンバー同士が本音を話せず、誤解が積み重なってる。こんなとき、「本治」では、信頼を再構築する取り組みをします。例えば、安心できる関係性をつくってから1on1をして本音を話せるようにしたり、個人個人の内面的な深堀りができるチームビルディングのワークショップで関係性を深めたりします。時間はかかるけど、これがじわじわと組織の「体質」を変容させるのです。
業績低迷のケースでも、短期的なキャンペーンや、目に見えるところの問題解決に取り組むだけではなく、社員が「何のために働くのか」を、身体感覚にアクセスしながら感じある場をつくるなど。こうした「本治」が、組織の持続的な成長につながります。
さらにいうと、もしかしたらそのコミュニティのトップの深層心理、無意識の領域にある何か、そういったものが組織全体に影響している、なんてこともあります。
ここまでくると、心理学の領域、カウンセリングの領域にまで、取り組みは深まっていきます。
僕は、心理学の学び、カウンセリングの学びをしたことで、このあたりにまで深く、組織や人を観察するようになりました。
バランスが鍵
東洋医学の面白いところは、「本治」と「標治」のバランスを重視すること。組織でも同じ。対立がヒートアップしてるなら、まず「標治」で火消しして、その後に「本治」で信頼を育てていく。どちらか一方じゃなく、両方を組み合わせるのがポイントです。
緊急的には標治をしつつ、本治を大切に中長期的に取り組んでいくのです。
標治ばかりしていると、組織はいつまで経っても忙しいまま、取り組みばかりが増えて疲弊し、問題は手を変え形を変えて押し寄せ続けます。
身体も同じですよね。
今日からできる小さな一歩
では、皆さんの職場やチームで、どうやって「本治・標治」を試してみるか? いくつかヒントをお伝えします。
• 標治:問題を洗い出し、ありたい姿を描く、ありたい姿が現状に対してギャップがあるならば、ギャップを解消するためのアイデアをだして、実行して検証を繰り返します。
標治はお馴染みですよね。
では、本治はというと、、、
• 本治:問題を感じている自分は何を不安に思っているのか、何が恐怖なのかを自己探究してみる。組織の中に存在する不安や恐怖は、過去のどのような体験が影響しているのか、あるいはどんな常識が自社にあるのか、自分自身にある囚われや先入観、バイアスはあるのか、自分を背後からみるように、組織の課題を俯瞰して感じてみる
こんな感じです。
僕は、本治のヒントを見つけたいお客さまには、「みんなで旅行に出かけて、温泉にでも浸かりながら、ゆっくり対話でもみてください」とよく言います。
普段の自分、普段の自分たちでは、気づかないような無意識に、答えが隠れています。そして、無意識レベルの小さな変化が、大きな変容につながる。それが東洋医学の智慧であり、組織開発の秘訣でもあります。
おわりに:あなたのチームを「治療」する
東洋医学の「本治・標治」は、組織開発でも「今を整え、未来を変える」鍵になります。あなたの職場やチームで、どんな「不調」を癒したい? 目の前の課題にバケツを置く(標治)ことから始めつつ、根本の屋根を修理する(本治)、あるいはさらに進んで家を立て替える、引っ越しする(これも本治かもしれない)に気づくための、まずは一歩を踏み出してみませんか?
人と組織が健康で輝けるように、これからも東洋医学の視点を取り入れながら、皆さんの「治療」をサポートしていきます。
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